不正のトライアングルとは?初心者でも理解できる3つの要素と事例
生徒
「ニュースで『不正のトライアングル』って言葉を見たんですけど、どういう意味なんですか?」
先生
「『不正のトライアングル』は、ヒトが不正を行うときに関係する3つの要素を示した考え方なんだ。」
生徒
「3つの要素って、どんなものですか?」
先生
「動機(ドウキ)・機会(キカイ)・正当化(セイトウカ)の3つだよ。それぞれの意味と、不正の仕組みについて詳しく説明していこう。」
1. 不正のトライアングルとは?
不正のトライアングルとは、ヒトが不正行為を行うときに発生する3つの心理的・状況的な要因を三角形(トライアングル)で表した概念です。不正のトライアングルは英語で「Fraud Triangle(フロード・トライアングル)」と呼ばれ、監査(カンサ)や内部統制(ナイブトウセイ)の分野でよく使われます。
この3つの要因がすべて揃うと、不正が発生しやすくなるとされています。それぞれの要素について詳しく見ていきましょう。
2. 動機(ドウキ)とは?
動機とは、不正をしたいと思う「きっかけ」や「理由」のことです。たとえば、次のような状況が該当します。
- 借金や生活費に困っている
- 家族の医療費を払いたい
- 成果を上げて上司に評価されたい
このように、金銭的なプレッシャー(精神的圧力)や職場の評価制度が、ヒトの不正への欲求を強める原因になるのです。
3. 機会(キカイ)とは?
機会とは、不正をしようと考えたときに「やろうと思えばできてしまう環境」があることです。たとえば、次のような状況です。
- 誰もチェックしていない現金の出し入れ
- ログイン履歴が記録されていないシステム
- 上司の承認がなくても処理できる業務
つまり、「バレにくい」「見つかりにくい」環境や、内部統制が甘い状態が、不正のチャンスを生むのです。
4. 正当化(セイトウカ)とは?
正当化とは、「これは不正ではない」「一時的だから大丈夫」といった、自分を納得させる心の働きです。たとえば、次のような考え方です。
- 「会社は自分を正当に評価してくれない」
- 「このくらいの金額なら問題ない」
- 「あとで返すつもりだから」
このように、自分の中で不正行為を正当な理由があるように思い込むことで、罪悪感を弱めて行動に移してしまうのです。
5. 不正のトライアングルの具体例
たとえば、ある従業員が次のような状況にあったとします。
- 動機:家計が苦しく、給料だけでは生活ができない
- 機会:売上金の管理を1人で任されており、上司の確認もない
- 正当化:「一時的に借りてるだけ。後で戻せば問題ない」
このようなケースでは、不正のトライアングルの3要素が揃っており、実際に売上金を抜き取るという不正が発生する可能性が高まります。
6. なぜ「トライアングル」なのか?
不正のトライアングルでは、動機・機会・正当化の3つの要素が均衡を保つ三角形のような関係にあるからです。
どれか1つでも欠けると、不正が成立しにくくなります。逆に言えば、企業や組織では、この3つのうちどれかをコントロールすることで不正を防ぐことができます。
7. 不正防止に必要な対策
不正のトライアングルの理解は、未然に不正を防ぐためにも非常に重要です。次のような対策が効果的です。
- 動機への対策:従業員の経済的負担やストレスを軽減する
- 機会への対策:内部統制(ナイブトウセイ)を強化し、チェック体制を整える
- 正当化への対策:倫理教育やコンプライアンス研修で、モラルを高める
これらを組み合わせることで、不正のトライアングルを崩し、不正の発生を抑えることができます。
まとめ
不正のトライアングルの全体像を振り返る
この記事では、「不正のトライアングル」という考え方について、初心者の方にも分かりやすいように、動機・機会・正当化という三つの要素を中心に解説してきました。不正のトライアングルとは、人が不正行為に手を染めてしまう背景には、必ずこの三つの条件が重なっているという考え方です。会計不正や横領、不正アクセス、情報漏えいなど、さまざまな不正行為の多くは、この三要素が同時に存在することで発生しやすくなります。
不正という言葉からは、特別に悪意のある人を想像しがちですが、不正のトライアングルの考え方では「誰でも条件がそろえば不正をしてしまう可能性がある」という点が強調されます。そのため、個人の性格だけに原因を求めるのではなく、組織や環境の問題として捉えることが重要になります。
動機・機会・正当化の関係性
動機は、不正をしたいと思う心のきっかけであり、金銭的な悩みや評価への不満、過度なノルマなどが代表的な例です。機会は、不正を実行できてしまう環境や仕組みの甘さを指します。チェック体制が弱い、担当者が一人に集中している、システムの監視が不十分といった状況が、機会を生み出します。そして正当化は、「自分は悪くない」「仕方がなかった」と自分自身を納得させる心理的な言い訳です。
この三つは独立しているようで、実は強く結びついています。動機だけがあっても、機会がなければ不正は実行できません。機会があっても、正当化できなければ行動に移しにくいでしょう。三つがそろったときに、不正のリスクは一気に高まります。この関係性を理解することが、不正防止を考える第一歩になります。
不正防止の視点で考えるトライアングル
不正のトライアングルは、不正が起きた原因を分析するだけでなく、未然に防ぐためのヒントも与えてくれます。三つの要素のうち、どれか一つでも弱めることができれば、不正は起こりにくくなります。たとえば、内部統制を強化して機会を減らす、相談しやすい職場環境を作って動機を和らげる、倫理教育やコンプライアンス意識を高めて正当化を防ぐといった対策が考えられます。
企業や組織においては、不正を「起こさせない仕組み」を作ることが重要です。不正のトライアングルを理解していれば、チェック体制の見直しや業務分担の改善、教育の必要性など、具体的な改善点が見えてきます。この考え方は、会計や監査の分野だけでなく、情報セキュリティや内部不正対策など、幅広い分野で活用されています。
日常や学習にも役立つ考え方
不正のトライアングルは、企業だけの話ではありません。学校や家庭、個人の行動を振り返る際にも応用できる考え方です。なぜ問題行動が起きたのかを考えるとき、本人の性格だけでなく、置かれていた状況や環境、心理状態を多角的に見ることができるようになります。この視点を持つことで、より冷静で建設的な判断ができるようになるでしょう。
生徒
「不正のトライアングルって、ただの理論かと思っていましたが、身近な問題にも当てはまる考え方なんですね。人は環境によって行動が変わるというのが印象に残りました。」
先生
「そうですね。不正は特別な人だけが起こすものではありません。だからこそ、環境や仕組みを整えることが大切なんです。」
生徒
「動機・機会・正当化のどれかを減らせば、不正を防げるという考え方は分かりやすかったです。ニュースを見るときの見方も変わりそうです。」
先生
「それは良い気づきですね。この考え方を知っていると、社会の出来事や組織の問題を深く理解できるようになります。ぜひ覚えておいてください。」